ハゲの三種の神器
裏話/原稿用紙22枚/2005.5.15
さあさあ、（オヤジどもにとって）とてつもなくデリケートな話題のはじまりだぞ！
ハゲったって、この俺のことだから、あんまり目くじら立てんでくれよ……。
抜け毛のひどさに気づいたのは、何歳のころだったか？ シャンプーしてて、ふと手を見ると、髪の毛が何本かひっついているんだよ。ゴシャゴシャやるたびに、ひっついているんだよ。それでよく見ると、風呂場の排水孔が、多量の髪の毛でふさがっているんだよ。
おでこの髪の毛をあげてみました。――うわっ、Ｍ型！
手鏡を使って後頭部を見てみました。――なんか、つむじが広くないかい？
いや、ショックでしたねーーー。正直……。
俺は大丈夫、と思ってたもんねぇ……。
また反対に、ハゲになっても、この俺の性格だったら、そんなに気にはしないだろう、と思っていたのが、自身がびっくりするほどの動揺ぶりに、ショックを受けました。（←ヘンな文章だね）
でもまあ、嘆いてばかりじゃいけません。
ハゲがたとえ自然の摂理であっても、いっちょそれに反抗してみようじゃ、あーりませんか。それでこそ俺なのであります。
――がんばれ俺！ 行け行け俺！
今までダテに生き延びてきた訳じゃないことを証明してみせてやれ！
英知を絞り、全身全霊をあげ、こうとお決めなさった神様を出し抜いて見せてやれ！
それでこそオヤジのなかのオヤジじゃあないかい！
背水の陣で勝負に望む気概で、俺はこの難問に挑戦したのでありました！！
三種の神器・その１
「ゲルマニウム・ころころローラー」
ころころ転がすだけで、顔や手のシミが消えるという、大物女優某Ａさんがお奨めしているアレである。
純粋ゲルマニウムの働きで、毛細血管を通して酸素を供給し、細胞の代謝機能を回復させるというスグレものである。
「う～～む……。ゲルマニウム！」
なんとなく耳に心地よい響きではないかい……。キキメがありそう。
さっそく購入。――いや、それにしても通販はこういうとき、都合いいね。さすがの俺も、店頭ではちょっと買えない、かもしれない。
さっそく、めちゃめちゃテンションあげて使ってみましたよ。
オーイェーッ！ イヤッホー！ オーケー、ヒァウィゴー！
ころころころ……。
「……」
ころころころ……。
「……」
ころころころ……。
「……」
おーいぇー、ざっつ げるまにうむ ぱわー……いぇーい……。
ころころころ……。
「……」
ころころころ……。
「……」
ころころころ……。
「……」
うーーん、まんだむ。（化石ギャグ）
なんとなく、お肌がぴかぴかとしてきたような……。なるほど、美肌効果……。
あ
ほ
かぁあああああ！！！
お肌をキレイにしてどーすんじゃーーー！ こらああああ！！！
毛ぇ生やすのが目的じゃろがああああっ！ おいいいいっっっっ！
なにやっとんじゃおんどりゃあああ！ あああんんんっ！！？？？
死にさらせえええ！ ぼけええええっ！
というわけで、速攻でポイしてしまった。
もったいないが、ほかに使い道なし。あと三つあったら、ラジコンカーの車輪にできたかもしれんがな。
ゲルマニウム。最初は、イケる、と思ったんだがなあ……。
敗因は、皮膚の表面にしか、効き目がなさそう、てとこかな。毛根はもっと深い位置にあり、そこに刺激がとどかないと効果がないようだ……。
というわけで、こんどこそ必勝の願いを込めて、必殺の兵器を購入したのでありました。
……それにしてもあの姿は、人に見せられたもんじゃなかったな。
三種の神器・その２
「低周波パルス・お顔の筋肉のたるみシェイプアップ・マッシーン」
う～～ん……。配慮したら、ずいぶん長ったらしい名称になっちまった。
しょうがない、ズバリ商品名を書こう。
「すり※くち※く」（どこがズバリぢゃ）英国製。ちゃんとＣＥマーク取得済みの電化製品である。
※
お顔のシワやタルミ、歳だからとあきらめていませんか？ ウフフッ！
知ってる？ シワやタルミは、筋肉の衰えが原因なの！ だーかーら、筋肉トレーニングで解決しちゃうのよ！！
でも、お顔の筋肉って、どうやって鍛えたらいいのでしょう？？？？？
おまかせあれ！ そんな悩みに答えてくれるのが、コレ！
エステサロンで、プロが使っているスグレモノなんだから！！！！！
お肌に当てるだけで、低周波パルスの働きにより、筋肉がクイッ、クイッと、勝手に運動してくれるワケ！ あなたはなんにもしなくていいんだから！！！
どう？ 画期的なエステ・マッシーンでしょ！！！！！！
毎日使うことによって、ツルツル、ハリハリのお肌になることウケアイよ！！！！！！！
「すり※くち※くって、スゴイですね！！ 悩みのタネだった二重あごが、すっきりしたんです！！！！！ 面倒くさがりのアタシだったんですが、お肌にあてるだけっていう、チョー簡単さが成功したヒケツだと思うんです！ これ、もうゼッタイ手放せないわ！！」（喜びの声……某県お住まいの某Ａさま）
いまならたったの18000円！ モーチーローン、分割払いも全然オッケーよ！
※
……
……
……
……うーん。
……ようするにアレだ、中年のおじさんの友、低周波パルス式「首筋・肩のもみもみマッシーン」である。
なんか、だなぁ……。ほんとにやるのかよ、おい？
うーん……。
……でもな、みなさん！
これはけっして、バカにはできないのですよ。
マジな話、頭皮のマッサージは、発毛に有効であることは、どうやら事実らしいのだ。
としたら、単に指先でモミモミやるよりも、ウルトラスーパー電気力で肉の奥底からモオミモオミやる方が、キキそうじゃあないですか？
うーむ……。
……よし、決めた。
――やるべし！（キラリッ！）
男がこんなところでいつまでもウジウジと迷い、立ち止まったままではいけないのである。
ここは前進あるのみなのでありました。
さて、そうなると問題になるのが、中年おっさんの「肩もみマッシーン」と、妙齢のご婦人の「顔もみマッシーン」の、どちらが己のハゲにふさわしいのか、という究極の２択である。
将棋の名人と竜王の激突にも似た熟考のすえ、俺は「顔もみマッシーン」を選択したのでありました。
この選択にご不満のある方への回答は
これ
さて――。
得意の通販でさっそく購入（一括払い）。無事にブツをこの手にしたのでありました。
※
まずは、シェイプアップに努める世のご婦人方に敬意を払い、通常の使い方を試してみます。
念のため、強度つまみを確かめます。
つまみにはゼロから１０までの強度が記されています。本体を手に持ったまま、くりくりっと親指１本で操作可能です。
……最初は、３くらいでやってみようか？（いきなり１０は、さすがの俺様もちょっと恐い）
両手にそれぞれ〝電極〟を持って、顔の横、エラの下あたりに当て――ドキドキ！――ええぃ、行ったれ！――スイッチオン！！
ぴくっ……ぴくっ……ぴくっ……ぴくっ……
「ひょうおふぃ！」（おおっ！）
「ひゅちひひるふうのひくにゅひひひんにゅるるぱ」（くちびるの横の筋肉が）
「ひくふふひくふふすしゅるるすすそ！」（ヒクヒクするぞ！）
「ちゅるるれ……」（どれ……）
「んちょろろっしゅほろううむおうおあぺらっちゅるるみゅんむ」（もうちょっとボリュウムを上げてみます）
〈強度３から１０に一気にアップ〉
「んがああああ！ があああああ！」（おお！ おお！）
「んがらっぺりじゅうむむらあくひひんひゅしゅううむ」（目尻からくちびるの横）
「みみみんばらあんあんあんあわわんがあああむもおおおお」（耳のした）
「どああああばばばばはらんにょにょにょぶぶぶんうううんうんうん」（あたりの全部の筋肉が）
「びょびょびょんんびょびょびょんぬごごごごあららら！」（ビックビックしてるぞ！）
〈電極を外す〉
はーはーはーはー……
あー、たまげたわい。
しかしながら、その甲斐あって、十分にその効果を知ったのでありました。
よし、これならいける、いけそうだ！（確信！）
そういうわけで、いよいよ本番となったわけでございます。
※
電極を両手に持ち、Ｍ型ハゲの両端に押しつけます。
「……」
ご想像下さい。
両腕をまあるく曲げ、頭の上に手の先を突き付けた形を。
こんな姿は、とても人には見せられません……。
――そんなこたぁ今はどうでもいい！
いきなりさっそくスイッチオン！
情け容赦なく、ハゲに猛攻を仕掛けたのでありました！
行け行け行け行け！ やっつけちまえ――ッ！
ぴくっ……
「うひっ……」
……ぴくっ……ぴくっ……
「うひっ……うひっ……」
……ぴくっぴくっぴくっ……
「うひょっうひょっうひょっ……」
ぴくっぴくっぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴくぴ！！！
「うきっうきっうきっうきききききききききききききききききき！！！」
〈電極を外す〉
はーはーはーはー……
……マジな話、これは確かに有効かもしれない。
続けたらもしかして、ホントに頭皮が若返るかもしれません。
でも、
それ以上にアタマの中が退化してしまいそうなので、
残念ながら、この武器も放棄することになったのでありました……。
う～～む、ハゲは強し。
こうなったら、もう仕方なし……。
いよいよ真打ち。
ハゲに決着を付けるために、俺は――
――〝禁断の最終兵器〟を投入する、
悪魔の決断を――とうとう、下したのでありました――！！！
……ああ！！
神様、仏様――どうかこの哀れな人間をお許し下さいませ！
――私にはもう、これしか残された手段がないのです。――ああ！！
三種の神器・その３ 大予告！！
「？」
悪魔の最終兵器とは何か――？
当てたらエライ。敬意を表します。（もしかしてあんたもハゲか？）
――次回、緊迫の最終話を待て！
三種の神器・その３
「×デランス」
出た！
とうとう、出てしまった。×デランス……。
業界最大手。
真実、俺、テレビコマーシャルの
「気っ持ちいい～～」
に、ころりとしてやられて、こいつに引っかかってしまったんだよ。
もうおわかりだろう。
今までのは単なる前振り。
これこそが、ハゲ対策のド本命だったわけなんである。
……なんだったけど。
やめますわ、すんません。
今まで散々引っ張ってきたんだけど、これ以上キーを叩くことをやめようと思います。
……
今回、「三種の神器」と銘打って、なんでこんなことやったかというと、全てはコレにあったんですよ。
「×デランス 大阪店 体験記」
実にえらい目にあったんです。
・「僕は納得しているからいいんです」とほざく、わけわからんハゲの営業マン。
・当時、一本50円もした、植毛用髪の毛。
・それを買わせておきながら、「あんた必要ないじゃない」という技師。
・「自分を会話で楽しませてくれない」と怒り出す女性植毛技師。
・契約期間以上の、換金も代用も不可能な理髪チケットを買わせた、詐欺まがい行為。
・いつもは洗髪前に毛穴をカメラで拡大して汚れを見せるのに、チェック日は洗髪後に実行。
・絶えず商品を買え買えと言いっぱなし。（全部で車一台分のお値段）
・……
などなど、はっきり不愉快な目にあって、
そんで、
ここでみんな書いてばらしてやったれ、と思ってこんなことやり始めたんだわさ。
だけど、やめますわ。
つまんない。
こんなことに時間かけてどーする。
他に有意義なことがあるでしょ。それに時間を注ぐべき。あんな所は、今俺がなんかしなくても、そのうちなんとかなるようになりますよ。
そういうわけで、これにてお終い。
さあさあ帰った帰った。もうお終いなんだから。お終いだよ～……。
ん？
まだ、帰んないの？
まいったなあ……
えい、仕方ない。
サービスじゃ！
最後まで読んでくれてありがとう。
ここまでつき合ってくださったハゲの貴方様に、本当の「三種の神器」をプレゼントするぜ、イェ～！
それは
１．バランスの取れた食事
２．健康的な睡眠
３．頭皮マッサージ
です。これホント。
じゃあね～！