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ウンコの話

裏話/原稿用紙4枚/2005.5.15



「 ★ 」


 まずは、上の図形をじっと見つめてほしい。
 三〇秒ほど待ってから視線を転ずると、視界中央に、色が反転した同じ図形「 ☆ 」が見えるはずである。いわゆる残像である。

 さて――

 もう十年以上も昔の話です。東北は某A県からここ、関西のH県に就職に来て、まだ数年しかたっていない時代の出来事です。
 その年の七月、私は出張で、ある地方都市に来ていました。
 仕事の内容は、簡単に言って手直し工事です。客先の成型機に取り付けた、自社の油圧クランプの動作がおかしい、という内容のクレームでした。

(筆者注:成型機とは、旋盤とか、プレスとかと同じく、工作機械の一種です。油圧クランプとは、油圧によって作動する、工作物を固定する機械のことです。すなわち、工作物を、油圧クランプを使って、成型機に取り付けて、工作作業を行うのです。私はこの油圧クランプ、油圧機器の製造メーカーに就職したのでした)

 出発前の検討の結果、クランプ時に、油圧が一瞬だけ落ちてしまうことが判明しました。それで、油圧回路中にパイロットチェック弁を組み込むべく、私が派遣されたのです。

(筆者注:パイロットチェック弁うんぬんは、どうでもいいです。とにかく、油圧が低下しないような工夫をしたと、お考え下さい)

 会社が予約してくれたホテルは、どうにも安ホテルで、前夜食べた食事もひどいものでした。それで、朝はもっとマシなものを食おうと思い、食事抜きで出掛けたのです。客先の工場に行く途中で、どこか適当な店を見つけて、そこで朝食を取ろうと考えたのです。

 見つけた店は、喫茶店でした。喫茶店と言っても、コーヒーも出せば朝昼の定食も出すという、肩肘張ったところがない、気楽な店でした。

 私は朝定を注文し、しばらくしてからトイレを借りました。腹具合がおかしく、「大」の方の用事があったのです……。

 そのトイレは和式の水洗式で、便器は、「モノ」を前方に流し落とすタイプのものでした。

 つまり洗い流すまでは、ステージの上に、私の「モノ」が、置かれっぱなしなのでした。

 私はそこで、「快適なひととき」を過ごしたのです。

 さて、その快適なひとときも無事終わり……。

 そのときの私は、無事「用事」も済み、放心状態でした。何とはなしに、……その、黒々とこんもりとした、その、「モノ」を、じっと、……その、じっっと、見続けていたのです。





 席に戻る途中、私はソレに気づきました。視界の真ん中に、なにか、浮かんでいます。白い、こんもりとした、なんかが。










(?)
















 よくよく見ると、これがまた、ウンコだずや。いやあ、ウンコ……。
 ウンコだずやウンコウンコウンコウンコ! ウンコウンコウンコ! ウンコ! にゃあ……まいったわ。しょうがねぇから、覚悟決めてそのまんま、席に座ったよ。なに、別に死ぬわけじゃあねえし。あわでるごどもねえべって。んだらさ、じつにタイミングよぐよ、注文したのが運ばれて来だんだもんや。朝飯だって。うほお、来だ来だ。一瞬、「ソレ」のごど忘れだよ。だばって、割り箸わっでな、んでな、飯、見たずや。んだらな、ウンコ、ほかほかほかほか湯気立ででらんだもの! で、んでな、ミソ汁見たずや。したっけ、ウンコ、もこもこもこもこもこもこもこもこ泡立ってらんだもの! んで、んでんで漬け物なんだもの。ガッコ(タクアン)でな、これが切り方がヘタなんだもの。一本物を輪切りにしてんだげど、最後まで切れてなぐでよ、下の方で、皮一枚でつながってんだもんな。んだから、端の一枚つまんで持ち上げたらさ、ウンコ、輪切りになってぶら下がって、匂いが、つーん……





















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