エロチックな通信方法
裏話/原稿用紙8枚/2005.5.15
若かりしハタチのころ、就職のため東北の山奥から、ミヤビな関西・某H県にやって来たとき、コロリとマイッてしまったものがあります。
それは、女性が口にする京言葉(?)です。
「〜〜どすえ」
「〜〜き、おすやろ?」
「
おはよう おかえり……」
「
かましまへん……」
「〜〜きはった」
「くれはらしまへんやろか……」
「〜〜わあ……」
などなど。
美女に耳元でこの言葉をささやかれてご覧なさい! 山出しの男なんか、ほんとに、アナタ、ほんとに――脳みそから骨の髄まで、トロトロにとろかされてしまいますから……。
※
数ある(?)エロチックな通信方法の中で、俺がナンバーワンだと考えていたのは、空中に腰で文字を描く――すなわち尻文字≠ナした。(それ通信方法かい?というツッコミはおいといて……)(ついでにNO.2は背中文字!)(もういいっちゅーねん!)
「やーおのや≠フ字はどー書くの? こー書いてこー書いてこー書くのっ……!」
という、アレでございます。(もしかして知らない人いるかな?)
ところがコレに匹敵する方法を発見してしまったのです。こっちに引っ越して来てから。――今回はそのお話です。
※
注記。
そのまんまでも多分差し障りないと思うんだけど、念のため時と人と場所をぼやかします。そのまま鵜呑みにされても、完全に間違っていますからね……。
※
若かりし頃、職場にそれはそれはもう、素直な可愛い子がいたんです。俺、なかなか気に入っていました。
ある日のこと。
別室で会議をしていると、廊下にその子が現れました。(ドアに窓があって、部屋の外を見ることができたのです)
その子は会議室の中を見回し、俺を見つけると
「ヤオさん、あなたです、あなた……」
と言う意味で、俺に向かってツンツン指さすジェスチャーをするではありませんか。
俺は確認をとる意味で、人差し指を自分の鼻に向けました。
(俺かい?)
すると、そうだと言わんばかりに首をこくこく縦に振ります。
(さて、何の用事だろう?)
そこで、その子は困ってしまいました。なぜなら、俺が参加しているその会議はきわめて重要な(ウププッ)会議でして、部外者が入室することができなかったからです。逆に、こちらも途中で退出することが出来ませんでした。
俺が座っている席と、ドアの窓までは少し距離があります。
ノートに文字を大書したって見えないし、大声を出すなんてもってのほか。携帯はその当時、影も形もありませんでした。
その用事は何か、急ぎの内容らしく、その子はかなり焦っているようすでした。
さて、素直で聡明で、そして可愛らしいその子は、どうやって俺に用事を伝えたのでしょうか?
※
彼女は、とても素敵な方法を編み出しました。すなわち――クチパクです。声を出さないまま、口をパクパクする、あれです。
その子はそれで、一生懸命になって情報を伝えようとしました。
唇を一つの音の形にします。
俺の方も、その言葉を捕らえようと、唇を同じ形に合わせようとします。
(うぅ? くふぅぅ……す? つぅぅぅ……? あっ、ふ≠ゥ! ふ≠セな、ふ=H)
すると向こうはウンウンと笑顔。そして次の言葉の音です。
(いぇぇ……? ねぇぇぇ? て? ね=I)
(……が=j
(……で=j
(……る=j
(……ぞ=j
(……〜〜=jウソ
これを二人で大真面目にえんえんとやらかしたわけでござんすよ! まったく!
そのうちに俺、妙な気持ちになってきました。つまり、何とはなしに、その子と猛烈に濃厚なキッスをやらかしているような、モヤモヤとした気分になってしまったのです。
その子はこっちの気持ちなんぞ知るわけなく、一生懸命お口をあふんあふん動かします。こっちもしょうがなく、ホントにしょうがなく、唇をモニョモニョ動かします。今まで伝わったはずの言葉なんか、とっくに頭の中から吹っ飛んでいます。
……
いや、もう――
……
俺はとうとうたまらなくなってしまいました!
俺は会議室を飛び出ると、周囲なんぞお構いなしに、その子を押し倒し、
ぶっちゅううううううううう…………スポンッ!
……と、やりたかったぞホンマに。
実際は会議室を出て、ごく普通に報告を受けた――ただそれだけでした。
いや、まったく。なんちゅーか、とにかくたまらんかったわい。
※
この出来事は強く印象に残り、俺は自作の作品の中で生かせないものか、と思ったものです。
うまく処理すれば、とても美しく、また感動的なシーンになるはずです。
ですが、当時(今もですが)の筆力ではどうにもできなく、この一件は大切に、心の中に宝物としてしまい込まれたわけでありました。
今まで忘れとったけどな。
本格的に忘却の彼方へ行ってしまう前に、ここにこうして晒すことにしたわけだ。
しかし、いやー、ほんとに、トロトロだったぜ!